アルミニウム合金の特性と種類、用途について

2010年8月14日更新

アルミニウム(Al)は非鉄金属の代表的な材料の一つで、通常は純アルミニウムか、アルミニウム合金として使います。この種類としては、製法から「展伸材」と「鋳物材」に分けることができます。前者の展伸材とは、板材、条、棒、線、管、形材、鍛造品や箔の形状のものを指し、アルミニウムとその合金のほとんどはこの展伸材と言われるものです。また、鋳物材とは砂型、金型にアルミを流し込んで固めた鋳物で、大量生産の場合はダイカストを用いて製造されることも多く、複雑な形状を持つ部品や製品、例えばシリンダヘッドやクランクケース、クラッチハウジング、ピストン、自動車用ミッションケース等で使われます。

数ある材料の中でもアルミニウム合金が選ばれることが多い背景には、この材料の最大の特徴とも言える「軽さ」が挙げられます。比重は約2.7で、これは鉄の3分の1程度しかありません。このことから航空機にも積極的に使われてきました(近年は航空機用途ではチタン合金と強化プラスチックの利用も増加しています)。

またこうした軽量性のほか、鉄鋼材料とはやや異なる性質を示すものの、添加元素を加えて合金にし、熱処理をすることで多様な性質を見せる点も工業用途での利用が多いことの理由と言えます。アルミの場合、熱処理して用いる合金と、非熱処理合金とに分けて考えることもできます。

アルミニウムの持つ機械的性質と特徴

各種アルミニウム合金のもつ性質としては、軽量性のほか比強度の高さや鍛造性、加工性(押し出し性、深絞り性)、耐食性(耐水、耐海水)、装飾性、無毒性、非磁性、真空特性の良さ(ガス放出率が小さいため真空到達性能が高い)、良好な電磁波や熱の反射、リサイクル性が高いなどが挙げられます。

アルミの削り出し等、この材料の加工性の良さは切削加工をはじめ、プレス、ダイカスト製品の生産量の多さが示す通り、折り紙つきです。また、アルミはその材料の表面にAl2O3(酸化アルミニウム)の酸化皮膜を常にまとっており、耐食性についても優れた性質を持ちます。アルマイト処理(陽極酸化処理)でこのAl2O3膜を意図して作り出して耐食性を強化することもできます。

アルミニウムの熱伝導性は高い値を示し、特に純アルミニウムは電気伝導性に優れます。鉄と比べ約3倍の熱伝導率を持つと言われます。低温環境下でも鉄鋼材料のように脆性破壊を起こすことなく使うことができる「低温じん性」も有します。

耐熱性についてはアルミニウムの融点は約660℃で、金属材料としてはかなり低部類になります。実用上、200℃以上では機械的強度が相当低下します。ただし、これは鋳造性がよいことの裏返しでもあり、融点の低さのほか、溶けた状態のアルミニウムも表面がAl2O3の膜が保護されているため、周囲のガスを吸収しにくく、湯流れも良好で鋳造しやすい材料です。

アルミニウムの代表的な物性値
融点 約660℃
密度 2.7mg/cm3(20℃)
縦弾性係数 79kN/mm2 (≒7000kgf/mm2
横弾性係数 26kN/mm2 (≒2600kgf/mm2
ポアソン比 0.33
線膨張係数 24x10-6/℃
 

アルミニウム合金の種類

 

アルミニウムも、目的とする特性(機械的性質、耐食性、耐水性、耐海水性など)に応じて各種添加元素を加えて幅広い種類の合金として使うことができます。これらは通常「材料記号」で表され、アルミの場合、「展伸材」と「鋳造材」に大別できます。展伸材は、形状として板・条・棒・線・管・鍛造品・箔などがあります。鋳造材は鋳物ですので、その製法から「砂型鋳物」「金型鋳物」「ダイカスト」に分類できます

アルミ記号の一覧表

アルミニウム展伸材と鋳物材

アルミニウム 1000系(純アルミニウム系)
材料記号が1000番台のアルミで純度99%以上の工業用純アルミのことです。1100や1200が代表的な材料です。非熱処理で用います。
アルミニウム 2000系(Al-Cu-Mg系:アルミ銅マグネシウム合金)
材料記号が2000番台のアルミで、機械的強度向上に効果のあるCuを添加したアルミ合金で、熱処理して用います。
アルミニウム 3000系(Al-Mn系:アルミマンガン合金)
材料記号が3000番台で、Mnを添加することでアルミの加工性や耐食性を低下させずに強度をあげたタイプです。非熱処理して用いるアルミです。
アルミニウム 4000系(Al-Si系:アルミシリコン合金)
材料記号が4000番台で、Siを添加して熱膨張を抑えて耐摩耗性を改善したアルミです。非熱処理して用います。
アルミニウム 5000系(Al-Mg系:アルミマグネシウム合金)
材料記号が5000番台で、Mgを添加して強度や溶接性を向上させたアルミです。Mgの添加量によって装飾用や構造用に使われます。非熱処理型です。
アルミニウム 6000系(Al-Mg-Si系:アルミマグネシウムシリコン合金)
材料記号が6000番台で、MgとSiを添加して強度、耐食性を向上させたアルミです。熱処理型になります。
アルミニウム 7000系(Al-Zn-Mg系:アルミ亜鉛マグネシウム合金)
材料記号が7000番台で、ZnとMgを添加してアルミ合金の中で最も強度を高めたアルミです。熱処理型の材料です。
アルミニウム 8000系(Li添加系:アルミリチウム合金)
材料記号が8000番台で、2000系、5000系、7000系などの高強度のアルミ合金にさらにLi(リチウム)を添加して低密度・高剛性にしたアルミです。
アルミニウム鋳造品の一覧
JIS H 5202に規定されたアルミの鋳物品の一覧です。またダイカストに用いられるアルミ合金はJIS H 5302に規定されています。

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