ステンレスの研磨に向いた砥石、研磨材、工具についておしえてください。

2011年4月5日更新

ステンレスを加工するときに問題となるのは、「加工硬化」と「不動態被膜」です。切削加工では特に問題となる加工硬化ですが、これは簡単にいえば、力を加えると金属が硬くなる現象です。切削にしても研削、研磨にしても表面に力を加える加工であることには変わりはありませんので、力がかかればかかるほど硬くなっていく性質は厄介なものです。研磨や研削時に特に力がかかってしまうのは、切れ味が十分でなかったり、砥石仕様があわないために研削抵抗が過度に上がってしまったり、砥石にかける圧力を上げ過ぎたりすることで発生します。

二つ目の不動態被膜とは酸化皮膜(酸化被膜)ともいいますが、ステンレスの表面に存在するナノレベルの膜のことで、酸素と反応して出来ます。この膜のおかげで腐食やサビといった現象に強いステンレスですが、研磨をするときにはこの保護膜の作用で磨きにくくなることがあります。研磨時には不動態被膜は一旦剥がれますが、周囲の酸素と反応してすぐにこの膜は再生していきます。鏡面に仕上げねばならないようなときで、かつ大面積であればあるほどこの問題は顕著となります。ステンレス研磨の研削液に、水だけではなく、酸を使うことがあるのはこの不動態被膜を破壊する意味合いがあります。

なお、ステンレスと一口にいってもその種類は200種類以上あると言われています。大別すれば、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分かれ、さらに細かくいえば、二相系ステンレスと析出硬化系ステンレスが加わり、5系統になります。これらは金属組織上の分類で、成分上で分類すればクロム系(マルテンサイト、フェライト)とクロムニッケル系(オーステナイト、二相、析出硬化)とに分けることができます。加工する上では、元となるステンレスの成分だけでなくどのような熱処理(焼入れ)を行っているのかによって性質が異なることにも留意する必要があります。

加工硬化のしやすさでいえば、オーステナイトが冷間加工では最も硬化しやすいタイプのステンレスですので、析出硬化系と並んで切削加工では難度が高くなると言われていますが、研磨では他の組織に比べて特段難度が高いわけではありません。単刃である切削工具に比べると、研磨砥石や砥粒は圧力のかかり方が違います。研磨では酸化被膜にも留意する必要があり、どちらかいえば成分に起因するこちらのほうが影響があると言えます。

砥粒でいえば、アルミナ系、ホワイトアランダムを砥粒に使ったWA砥石と比較的相性のよい材料です。また、仕上げ工程では酸化クロムを用いることもありますが、こちらは削る能力はほとんどないため、傷が目視できるレベルであれば、その傷を取ることはできません。WA砥石がステンレスと相性が良いのは、砥粒の破砕性と関係しているとされます。

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