ダイヤモンドの耐熱性(耐熱温度)はどれくらいですか?

2011年3月15日更新

600℃から黒鉛化、800℃以上で炭化していくダイヤモンド

ダイヤモンドは実用化されている物質の中では最も硬い物質として知られています。ただしこの「硬さ」とは裏腹に、耐熱温度は高いほうではありません。ダイヤモンド指輪が本物かどうか調べるのに、火に近づけて炭化すれば本物であるというような嘘とも本当とも付かない話がありますが、実際、ダイヤモンドは熱にあまり強くありません。100℃や200℃など日常的な温度ではどうもありませんが、600℃付近から黒鉛化すると言われています。したがって、耐熱温度ということであればこの600℃と言う事も出来ます。なお、800℃を超えると炭化がはじまり、ダイヤモンドの最大の特徴である「硬さ」が失われ、軟化していきます。

この600℃という温度を聞いて結構耐熱温度が高い、と思われる方もいるかもしれませんが、研削や研磨でワークを削っているとき、砥石とワークの接触点の温度は1000℃を超えてしまうこともあります。

また、砥石自体を製造するとき、工業炉で焼き上げる「焼結」という工程がありますが、このときも砥石を形作る結合剤の種類によっては1000℃以上の温度で焼き上げなくてはならないこともあり、普通に焼いてしまうとダイヤモンドが熱損傷し、ダイヤモンド砥石の性能が落ちてしまいます。このため、ダイヤモンド砥石メーカーではダイヤモンドを熱で損傷させない工夫を行っています。

人造ダイヤモンドと天然ダイヤモンドに違いはあるか

また、ご存知の方も多いかと思いますが、ダイヤモンドには人の手が作り出した人造ダイヤモンド(合成ダイヤモンド)と、鉱山で採れる天然ダイヤモンドがあります。この両者の組成や物理的性質には大きな違いはありませんが、耐熱温度という観点から見るならば、どちらのダイヤモンド内部にも必ずある不純物の種類によって割れ方や割れる温度が異なる可能性はあります。天然ダイヤモンドの色の違いは主としてこの不純物の種類や量によるもので、ダイヤモンドの4Cに代表されるいわゆる「見た目」が価値を決めます。対して、工業用のダイヤモンドの多くは合成ダイヤモンドが使われていますが、これらは破砕性(割れ方)が重要となります。破砕性によってダイヤモンドの工業的な価値が決まると言っても過言ではありません。

合成ダイヤモンドの製造過程では金属の「触媒」を使います。これらは溶媒金属とも言いますが、インコネル、コバルト、ニクロム、ニッケル、マンガン、鉄、ロジウム、白金、クロムなどが使われ、これらの熱膨張係数の違いによって、ダイヤモンドの割れ方(破砕性)も変わるというわけです。なお、こうしたダイヤモンドが内包する不純物を「インクルージョン」と言うこともあります。

なお、砥石を学んだ方はご存知かもしれませんが、砥粒として使われるダイヤモンドは微小破砕、つまり少しずつ欠けながら仕事をしていきますので、より小さく割れやすいもののほうが切れ味に優れます(破砕性に優れる、と表現します)。このダイヤモンドが割れる仕組みも、ワーク(加工対象)に何度もぶつかって割れるという理由のほか、加工中の温度上昇によって、ダイヤモンドの内部に残っている不純物(金属)が膨張してそれによってダイヤが割れるという現象が起きているとされます。

高温下や、鉄系素材に強いCBN

ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ言われる人工的な物質であるCBNは、高温になると表面に酸化膜が出来て1300℃程度までは安定していますが、この温度域ではダイヤモンドの硬度は極端に落ち、炭化してしまっているので高温下ではCBNのほうが硬さに優れます。このため、ダイヤモンドが苦手とする鉄鋼材料の加工や、高温下が避けられない環境下での加工工具の刃として使われています。刃物研ぎなど手作業で用いる場合は特に問題とはなりませんが、研削盤を用いた機械加工では鉄鋼材料(鉄を含む金属系素材)にダイヤモンド砥石を用いると切れ味が極端に落ちたり、損耗や摩耗が大きく思うように研削できないことがあります。これはある一定以上の高温下でダイヤモンドの成分であるC(炭素)と、Fe(鉄)が反応し、ダイヤモンド側の炭素量が奪われているからとも言われます。

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