ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の物性と用途、特性について
熱可塑性のプラスチックで、酸やアルカリ等への耐薬品性に優れ、ガスバリア性にも優れた無色透明の弾性のあるプラスチックです。耐熱温度は130〜150℃になります。塩化ビニル(PVC)と混同されることがある樹脂ですが、両者は異なる性能を持ちます。元々はダウケミカルで開発されたプラスチックです。当初は食品用のラップでの利用を想定したものではありませんでした。
難燃性で、高温下でも安定している材料です。耐薬品性にも優れますが、高温のジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドには溶けます。また油脂性の強い食品等を電子レンジで加熱する場合は、フィルムが直接接触しないようにします。耐水性にも優れています。
サランラップにはこのポリ塩化ビニリデンを使ったものが多く市販されています。ハムなどの食品を密封するケーシングフィルムとしてもよく使われています。塩素原子を含むため、焼却時にダイオキシン発生等が問題視されることもあり、この素材以外のラップも開発されています。
主な用途は、食品用ラップフィルム、ハム・ソーセージケーシング、フィルムコート、繊維、濾過布、網、フィルム、ラテックス(PVDCを混ぜることで防水性や防湿性を付与することができる)、カーテン(繊維加工されたもの)等が知られています。
物理的性質 | 密度(g・cm^-3) | 1.65から1.72 | |
---|---|---|---|
融点(℃) | 結晶性 | 210 | |
非晶性 | − | ||
透明度 | − | ||
吸水率(%)3mm、24h | 0.1 | ||
成形特性 | 成形温度範囲(℃) | 148から204 | |
成形圧力範囲(kgf・cm^-2) | 703から2116 | ||
成形収縮率(%) | 0.5から2.5 | ||
機械的性質 | 引張強さ(kgf・mm^-2) | 2.1から3.5 | |
最大伸び率(%) | <250 | ||
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | 1.41から1.90 | ||
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | 2.9から4.3 | ||
引張弾性率(kgf・mm^-2) | 35から56 | ||
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) | - | ||
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) | − | ||
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) | 1.63から5.4 | ||
硬度(硬さ) | ロックウェル | M50から65 | |
ショア | - | ||
熱的性質 | 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 | 3.0 | |
比熱(cal・K^-1g^-1) | 0.32 | ||
線熱膨張率(10^-5K^-1) | 19.0 | ||
熱変形温度(℃) 18.6kgf・cm^-2 4.6kgf・cm^-2 |
54から65 | ||
電気的性質 | 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) | 1014〜1016 | |
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 | 2.3から15.7 | ||
比誘電率(εγ) | 60Hz | 4.5から6.0 | |
MHz | 3.0から4.0 | ||
誘電正接(tanδ) | 60Hz | 0.03から0.045 | |
MHz | 0.05から0.08 | ||
化学的性質、耐薬品性 | 燃焼性、速度(mm・min-1) | − | |
日光の影響 | わずか | ||
弱酸の影響 | 無 | ||
強酸の影響 | 抵抗 | ||
弱アルカリの影響 | 抵抗 | ||
強アルカリの影響 | 抵抗 | ||
有機溶剤の影響 | 無〜わずか |
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