電着砥石を使っていたら、砥層の部分が剥がれました

2009年9月20日更新

電着砥石の特徴

砥石のうち、「電着」は鉄や45Cなどの鋼系の素材にメッキをつけ、そこにダイヤモンドやCBNなどの砥粒を付着させた工具です。砥粒の突き出し量が多く、加工物に深く切り込めるため、鋭い切れ味と軽快な加工性を特徴としますが、メッキの機械的な保持力だけで砥層部分を支えているため、寿命や耐久性にはあまり優れていません。電着面を焼いたり、メッキに添加剤などを入れて密着性を高める工夫もありますが、それでも他の砥石に比べると耐久性に少々劣る部分があります。

電着層の剥がれの状況確認

剥がれた場合、まず砥石の全面からするりと電着層から剥がれてしまったのか、一部分だけ剥がれているのか確認する必要があります。メッキ層自体が応力で剥がれてしまったのか、激しい磨耗や熱で電着層の一部分だけ剥がれたのか、またメッキごと剥がれているのか、砥粒が磨耗しているのか、加工状況であわせて検討することが望ましいです。

剥がれの原因としては、

粒度が粗すぎる

砥粒の粒径が大きくなればなるほど、それを保持するための強大な力が必要になります。粗工程では、加工物の表面もガタガタになっていると思いますが、こうした表面を研削すると、電着層の表面から出ている砥粒には大きな負担がかかります。

加工条件が砥石の仕様に対して過酷過ぎる

特に乾式で用いられる場合は、強い摩擦が発生し高温になるため、回転数や加工時の圧力には注意する必要があります。

砥粒の選定を間違えている

例外もありますが、鉄を含む素材の機械加工ではダイヤモンド砥粒はほとんど用いられません。ダイヤモンドの炭素が鉄に奪われるため、とも言われており硬度を十分に維持することができないので、CBNを用います。

電着部分の面積が大きい、あるいはその逆。

他の砥石に比べて切込み深さが大きくなる傾向がありますので、加工対象・加工条件によって電着の面積を再考する必要があります。

メッキが厚すぎる

電着砥石の本体であるメッキ部分は、圧縮応力により内側に縮む力が働いています。これはメッキが厚くなればなるほど大きくなり、応力をうまく緩和できないとメッキごと剥がれてしまう原因にもなります。

電着砥石の不良

密着不良や、砥層に著しいムラがある、色がおかしい等の問題がある場合は電着の際の不良の可能性もあります。またシャンクの選定不良、特に焼き入れ鋼やアルミなどには電着はしづらいため、これらも一考の必要があります。

剥がれ対策としては、下記のような方法が考えられます。

  • 【台金の改善】電着層をつけるシャンク(台金)の材質を焼き入れなどの行なっていない生材にする。また、可能ならばS45Cなど電着層と密着力のよい素材を選択する。
  • 【台金の改善】シャンクの形状変更を検討する。
  • 【砥層の仕様変更】メッキ層のかかる範囲を調整する。メッキ層は応力により収縮しようとする力が働くため(圧縮応力)、なんらかの形で工具外周に引っ掛けるようにメッキ層を施し、物理的に固定する。
  • 【粒度の仕様変更】粒度の選択を再検討する。粒度を細かくできるなら細かくする。
  • 【集中度の仕様変更】砥粒の密度を電着砥石のメーカーと相談の上、変更してもらう
  • 【加工条件の改善】加工条件を再検討する。湿式が可能ならば、研削液を用いた加工をする。難しい場合、加工面を冷やす方法を考える。回転数を抑制する、切り込み量・送りを調整する。
  • 【加工方法・工程の改善】電着工具を粒度違いでいくつか揃え、段階的に加工していく。一つの粒度で過度に加工しないようにする。

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